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興奮するシビれる文章がある

このブログは基本的にオーナーが更新しています。農作業や移住定住、神社の話まで。イーリーカフェのブログは、カフェのブログにしては変な内容を書いていると思われるかもしれません。

イーリーカフェは「小清水集落を100年後まで存続させたい」という思いのもと、オープンしました。そのため、他の飲食店と違い、メニューやお知らせだけでなく、集落のことや地域の課題など話題が多岐にわたります。カフェのことだけでなく、色々なことを伝えたい。

それに、私は「文章」が好きなんです。映画、小説、実用書、漫画、歌の歌詞。

興奮する文章、痺れる文章があります。それは内容だったり、字面だったり、修辞だったり。

ひとつ、心に残っている文章を紹介します。

村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」

昔のアパートでは電話が共用でした。入居者宛の電話が鳴ると普通は管理人が出て取り次いでくれますが、本作の舞台のアパートでは管理人が不在がちで電話が鳴りっぱなしなことが多い。それを下のように表現するんです。

管理人が管理人室にいたためしがなかったので、電話のベルが鳴るたびに住人の誰かが受話器を取り、相手を呼びに走った。もちろん気が向かない時には(とくに夜中の二時になんて)誰も電話には出ない。電話は死を予感した象のように何度か狂おしく鳴き叫び(32回というのが僕が数えた最高だ)、そして死んだ。死んだという言葉はまったくの文字通りのものだった。ベルの最後の一音がアパートの長い廊下を突き抜けて夜の闇の中に吸い込まれると、突然の静寂があたりを被った。実に不気味な沈黙である。誰もが布団の中で息をひそめ、もう死んでしまった電話のことを思った

暗い廊下に最後の一音が鳴り響く様が伝わってきます。アパートのそれぞれ別の部屋にいながら1つの電話のことを心に浮かべている住民の姿が浮かびます。

痺れます。この本を読んだのはだいぶ前で内容も覚えていませんが、この文章だけは覚えています。

これからもいろいろなことをこのブログで書いていきますので、お付き合いよろしくお願い致します!